大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡家庭裁判所 昭和42年(家)291号 審判

申立人 田辺好子(仮名)

未成年者(被後見人) 田辺康(仮名) 昭和二三年六月七日生

事件本人(後見人) 田辺勝(仮名)

主文

未成年者田辺康の後見人田辺勝を解任する。

理由

申立人田辺好子および未成年者田辺康らの父田辺照一は昭和三一年七月二三日に、同母テルミは昭和三二年四月一六日にそれぞれ死亡したため、右両名について後見が開始し、指定後見人がなかつたので、同人らの伯父(母テルミの実兄)に当る田辺勝からの後見人選任申立(当庁昭和三二年(家)第四九四、四九五号事件)により、当裁判所において審理の結果、同人が昭和三二年五月九日後見人に選任せられ、同月一三日後見人として就職した。

しかし、実際の監護養育は後見人の母である祖母田辺タメが申立人ら幼少のころより同人らの家に同居してこれに当り、引続き現在に至つている。申立人好子は、昭和四〇年八月七日成人に達したのですでに後見が終了し、未成年者康のみが現在なお後見に服している。しかして、申立人ら姉弟の所有する財産は、亡父名義の田約五反歩、亡母名義の宅地約三〇〇坪、田約五反歩、畑約四反歩と木造瓦葺平家建居宅一棟建坪四〇坪であるが、事件本人田辺勝は後見人就職以来、被後見人らの財産管理などについてとかく適正な後見事務に欠けるところがあつたため、昭和三八年四月一日当裁判所において民法第八六三条の職権による後見事務の監督処分を受けた。(当庁昭和三八年(家)第三二二、三二三号事件)

しかるに後見人は、申立人好子が成人に達し、後見終了後管理財産の収支計算を求めた際にもこれに応じないのみならず、私生活においても特定女性と婚外交渉を継続し、自己の家庭をほとんどかえりみないなどの不行跡があり、かつ同人は、現在業務上過失致死、道路交通法違反により禁錮一年六月、罰金七、〇〇〇円の判決を受け、昭和四二年一月二七日より山形刑務所において服役中であるため、後見事務を執ることは到底不可能な状態にある。

よつて、同人には民法第八四五条所定の後見の任務に適しない事由があるので解任するのを相当と認め、主文のとおり審判する。

(家事審判官 土田勇)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例